BBCが最近雑誌に発表したLauren Hansen著、Jonathan Duffy編集の記事"What Happened to Second Life"は、見事なくらいに最悪で、それを読んだら組織全体の信頼性を揺るがすほどだ。もしBBCが、比較的シンプルなテクノロジーストーリーを、これほどまでに明白に、完全に間違うことを知ったら、あなたはこう思うだろう:他のニュースも、こんな風にめちゃくちゃなのか?800字ほどの記事の中に、少なくとも5つ、記事の主張をほぼ完全に破壊するような過ちがある。
1. BBCは、セカンドライフユーザー数を誤ってレポートしている。
『サイトへの参加者数(joining the site)は、2007年に450,000人から400万人に跳ね上がった』
Hansenはこの数字の引用先を提示していない。そして、発表されているデータと正反対の数字だ。2007年の半ばまでに報告されているセカンドライフの登録者数(registrations)は、600万人を越えていた。Hansenが言うところの"参加者数(joining the site)"が何を指しているのかはっきり分からないし、彼女自身も、その概念についてよく分かっていないのではないかと思うが。
2007年、SL住人数の中でアクティブに、リピートユーザーになった数は、50万人近くだ。(これはトータルリピートユーザー数が約20万人だった2006年から比べて飛躍的な伸びだ)
2. BBCはセカンドライフのメディア報道の傾向を誤って解釈している
『しかし、メディアの興味関心に急に火が付いたのと同様、その興味は引き潮のように去っていった。2008年の話題は40%垂直下降し、今年はさらに下がっている』
セカンドライフに関するメディア報道が、2007年の鼻血が出るほどのピークから減っているのは事実だが、それはメディアの興味関心が「引き潮のように去った」ことにはならない。Google Trendsを見てみると、セカンドライフへの興味関心は2006年半ばに急上昇しており、その直後のBusinessWeekのカバーストーリーで、世界的に認められるSLブームの波がやってきた:
確かに数字は落ちているが、ブーム前のレベルよりも常に注目されているのも確かである。そして事実、セカンドライフについて今でも目立ったメディア報道がされている。例えばこの12ヶ月だと、New York Times(ほぼ間違いなく、世界で最も文化的な影響力を持つ出版物)は、ニ度のセカンドライフ特集を組んでいる -- 建築についてと、アートシーンについてだ。他のバーチャルワールドは、このように大々的に注目されてはいない。
SLと、シリコンバレーの秘蔵っ子Zyngaから出た、現在2000万人近いアクティブユーザーがいるフェイスブックベースの仮想世界YoVilleを、比較の為に考察してみる:
結果は、この通りである。約75万人ユニークユーザーの仮想世界のほうが、2000万人規模の仮想世界よりもメディアの注目を集めているのだ。
3. BBCは、セカンドライフの中でのRLマーケティングキャンペーンについて、誤ってレポートしている。
『「店を開いても、誰もお客が来ないということもある。」〔Wired UKのエディター、Ben Hammersleyの言葉〕「オープニングの時には、20人から30人くらいの人が来るかもしれないが、その後、二度と戻ってこない。お金を使う価値のないものだ。」』
BBCは、なぜマーケティングキャンペーンを軸として成功を判断するのか説明していない。同様にひどいことに、インワールドのRL宣伝活動の成功例を一つも挙げていないし、見込まれている結果についても触れられていない。(例えば、ハリーポッターのIMAXキャンペーンは、チケットセールスの増加に直接結びついたし、Gossip Girlのサイトは、38,000人の月間ユニークユーザーを呼び寄せた)
4. BBCはセカンドライフとスマートフォンの関係を誤って伝えている。
『人々がスマートフォンを使うようになるにしたがって、サイトは携帯の中でも動作する必要がある。「携帯は、オンライン活動の未来の形です。セカンドライフにとっては、入り込むのに苦労することでもあるのです。」とMr Clarkは言う。』
これは、少なくとも2つの点で間違っている。スマートフォンは、仮想世界やMMOの利用パターンの市場を変えてはいない。--これらは、今でも約1億5000万人によって、圧倒的にPCでプレイされているもので、その数が携帯に移行しているという著しい動きは見られない。開始から1年後、iPhoneのApp Storeでは、星の数ほどあるゲームアプリの中に仮想世界/MMOと同期するアプリは、ただの一つもない。
いや、少なくとも一つは、あった:セカンドライフの中で相互作用するiPhoneアプリだ。
5. BBCは、セカンドライフを何の為に使うものかさえも誤解している。
『そして、根本的な疑問はセカンドライフが、ゲームなのかソーシャルネットワークサイトなのかということだ。「そんなに優れたソーシャルスペースではない」とMr Hammersleyは言う。「フェイスブックや一般的なオンラインフォーラムほど良くはない」』
セカンドライフを、この方向で枠組みすることは、BBCと想定上のエキスパートHammersleyが、セカンドライフがオンラインソーシャル媒体として、どう機能しているか分かっていないということを表している。(セカンドライフは、ゲームでもソーシャルネットワーキングサイトでもなく、それでいて両方の要素も引き寄せている。)そして彼らは、セカンドライフが多様な幅を持つサブコミュニティーの中で、どのように利用されているかを知らない。3Dアートを創り、それを体験するのに、フェイスブックは、より優れた相互作用を持つ媒体だといえるだろうか?または、匿名のまま戦時中のトラウマから回復することには?もしくは、ホロコーストの生存者に出会うためには?奴隷の孫が演奏するライブのブルースミュージックを聴きながら踊るのには?世界中に散らばっている、ナスダック登録会社の同僚とリアルタイムにコミュニケーションするには?そして、ネパールの病院のデザインを計画するためには?
これらは、BBCとHammersleyは触れていない -- というか、おそらくまったく分かっていない。
最終的に、このBBCの記事で回復可能な部分は、セカンドライフが、始めるのには敷居が高いというささいな観察だけだ;ただし、これはニュースとはいえないだろう。上に挙げた全てのことを考慮して、ニュースになりそうなことは、これだ:敷居の高さにもかかわらず、ブームが去ったにもかかわらず、セカンドライフは成長を続けていて、メディアから著しく注目されている。そして、現実世界の組織を引きよせ続けている。
ただし、もしBBCがこのようにレポートしていたとしても、2年遅れとはいわないまでも、Wall Street Jounalが数ヶ月前にレポートしたことの後を追っているだけになってしまうのだが。
2007年4月より、SLウロウロユーザー。オーストラリア在住。音楽イベントによく出没します。悩みの種は微妙な時差でイべント中に眠くなること。超有名ブログの日本語訳は大チャレンジですが、日本のユーザーの皆さんとNew World Notesの記事をシェアすることができれば光栄です。
ゆるゆるSLブログ「りすが行くわよ」http://ameblo.jp/sannyy/
Comments