Sanny Yoshikawa が、New World Notesのなかから、毎月おすすめのバーチャルワー
ルドニュースを日本語で紹介します。
Sanny Yoshikawa covers the monthly virtual world highlights from New World Notes for virtual Japan.
開発途上国のメタバースクリエイターにとって、Second Lifeの参入コストは高くなりすぎた(読者のコメントから)
ブラジルにいる読者のMoannaさんから、Second Lifeでは経済的負担が高く新規参入が難しいという先月の「SL経済調査」について重要なコメントが寄せられました。彼女のような開発途上国の人々にとって、SLにかかるコストは、EU/北米に拠点を置くクリエイターよりもはるかに大きな負担となるのです。
Moannaさんはコメントの中で、SLにかかる費用をブラジルの通貨レアルに換算して説明しています。SLのクリエイターになるには、アイテム制作に必要な、Avastar、Marvelous Designerなどのプログラムやツールに費用がかかります。また、撮影のために必要なテーブルや家具などのアイテムも購入しなければなりません。非常にレートが低いブラジルの通貨だと、USドルでリンデンドルを購入するよりも4.7倍くらい多く支払わなければならない感覚だとMoannaさんは話します。
SLでは1600人のクリエイターが、バーチャルコンテンツの販売やサービスの収入によって年間US1万ドル以上の収入を得ています。この金額は、ブラジルで最低賃金で働く人の3倍以上の収入に値します。
Moannaさんは、新規参入するデザイナーを奨励するような規定が必要だと訴えます。すでにSLの中でビジネスを持っている人はUSドルで収入を得られているため問題ありません。しかし、最低賃金が1212レアル/月(月給33000円)しかなく税金が高いブラジルでは、SLで新しくビジネスを始めようとする人が必要なツールを購入するにも、負担が大きすぎるのです。
Wagnerは、Moannaさんの意見を紹介した後に、「Linden Labは、新しいデザイナーの手数料を大幅に下げ、デザイナーのコンテストを開いて宣伝活動をするべきだ。」とコメントしています。
開発途上国のメタバースコンテンツクリエーターは、市場に参入すればかなりうまくいく(読者のコメントから)
ブラジルに住む読者からの素晴らしいコメントで、参入コストが高く開発途上国のメタバースコンテンツクリエーターが成功するのは難しいという指摘に広がりが見られました。そのコメントを紹介します。
その逆もしかりで、USドルはとても価値があり、アメリカでUSドルを使うよりも高い生活水準を手に入れることができます。
私は、Second Lifeのコンテンツ制作によって、十分な食事、家賃、請求書の支払いを賄うことができます。Adobeの月額使用料も現地通貨建てで可能です。しかし、確かに(アバターの服を作るツールの)Marvelous DesignerはAdobeの月額使用料と比べるととても高価です。
メキシコ在住の読者、Reiilleさんも同じことを言っています。
1USドルは20ペソの価値があり、もちろん、それを収益として回収できれば、大きな経済的支援となります。私自身、この市場に参入しようとしていますが、新しいブランドを立ち上げるための投資は、私ができる範囲を超えており、なかなか進みません。
Second Lifeのような比較的固定的な市場に参入することは、途上国のクリエイターにとっては難しいことですが、一度参入すれば、圧倒的な強さを発揮することができるようです。
当然のことながら、メタバースコンテンツクリエーターを専業とする人の多くは、開発途上国の出身者であるようです。最近の例を挙げましょう。OSMIAはウクライナに拠点を置いていますが、この国の最低賃金は、月収US231ドルです。献身的で才能あるフルタイムのSLコンテンツ制作者は、バーチャルコンテンツだけでその2倍から3倍は稼ぐことができます。
そう考えると、年収1万ドル以上のSLクリエイター1600人のうち、何人が開発途上国、つまり中所得国にいるのだろうかと考えさせられます。
衝撃のWeb3統計: CoinbaseとOpenSeaの取引件数を足しても、Second Lifeでバーチャルアイテムを購入する人の方がずっと多い
Web3 is Going Great という皮肉な名前のブログから、衝撃的な、あるいは愉快な(見かたによっては)今日の統計が発表されました。
(Coinbaseは、NFTマーケットプレイスの)ウェイティングリストに300万人のユーザーがいると主張したが、パブリックマーケットプレイスのリリースはCoinbaseの今の評判から考えると衝撃的なほどうまくいかなかった。このプラットフォーム上の取引は、まだ1日に200件以上になっていない(1日に10万件以上の取引が定期的に行われているOpenSeaや、1日に1000件以上の取引が行われている小規模な競合のLooksRareと比較して)。
2010年以降、技術的に今どきのプラットフォームとは思われていないSecond Lifeでのバーチャルアイテム購入に比べて、NFTの売上はかなり劣ります。Second Lifeには毎日約20万人のアクティブユーザーがおり、これらのユーザーは1日平均1~2個のバーチャルアイテムを購入していると推定するのが妥当です。(言い換えれば、OpenSeaの2倍以上、CoinbaseのNFTの1000倍以上の販売件数が毎日あることになります。)
この現実は、なぜかNFTに関わる多くの企業、ブランド、有名人には伝わっていません。
SimilarWebによると、Coinbaseのサイトには6500万人以上のユーザーがおり、現在4700万人以上の月間訪問者数があるとのことです。OpenSeaはさらに多くの訪問者を獲得しています。月間の訪問者数は約7800万人です。そして、Snoop Dogg、Grimes、Emily Ratajkowski、Eminem、Reese Witherspoon、Gwyneth Paltrow、Mila Kunis、Paris Hiltonなどの有名人によるNFTのプロモーションが行われてい、ます。(パリス・ヒルトンは、「メタバースの女王」と宣言しています。)
これだけ注目されているにもかかわらず、NFTの販売件数は「いまどうなっているの?」と言われるプラットフォームよりも下回っているのです。
利用規約では、The Sandboxに関連するNFTが実際には所有できないことになっている
インディアナ大学法学部のJoão Marinotti准教授は、The Conversationのなかで、The Sandboxに関連しているNFTは、実際にはユーザーに所有されないという鋭い指摘をしました。
The Sandboxは、あなたがこのプラットフォームの禁止行為に関与したと「道理にかなって信じられる」場合、あなたのユーザーアカウントを直ちに停止または終了させ、あなたのNFTの画像と説明をプラットフォームから削除することができます。これは、あなたへの通知や、そのほかの義務を負うことなしに実行することが可能です。
実際にThe Sandboxは禁止された行為の結果として、あなたが取得したと思われるNFTを直ちに没収する権利さえ主張しています。ブロックチェーンを利用したNFTをどうやって没収するのかは技術的な謎ですが、このことはバーチャルオーナーシップと呼ばれるものの正当性にさらなる疑問を投げかけるものです。
The ConversationはThe Sandboxにコメントを求めましたが、回答は得られませんでした。
原文はこちらから読めます。The Sandboxの利用規約を見ると、Marinotti氏の言う通り、思い切った条件になっているようです。The Sandboxがこのような「緊急時にはガラスを割る」というような条項を設けていることを、必ずしも非難するつもりはありません。しかし、これはNFTが新しくて重要なデジタル所有権の形態であるという考えを根底から覆すものです。そして、実際に企業や投資家が関わる場合、利用規約をよく見て、誰が何を本当に所有しているのか確認する必要があるでしょう。ある調査によると、利用規約に自分の子どもを要求される項目が入っていても、98%の人は読まずに同意してしまうとMarinotti氏は記しています。
詳しくは…
The Sandbox's Terms Of Service Says You Don't Actually Own NFTs Associated With The Sandbox
オンライン・ビデオ会議が創造性を損なうという研究結果 -- バーチャルワールド会議の可能性?
Natureに掲載された研究のタイトルは「Virtual communication curbs creative idea generation」ですが、具体的にはZoom形式のオンラインビデオ通話を指しています。
5カ国(ヨーロッパ、中東、南アジア)の実験室研究およびフィールド実験において、ビデオ会議が創造的なアイデアの生成を抑制することが分かりました。具体的には、視線の測定や、記憶の測定、潜在意味解析といった方法を使って、ビデオ会議がアイデアの創出を阻害していると明らかにしました。
Wagnerは、この結果に納得の様子です。彼はZoomやSkypeのビデオ会議で編集やブレーンストーミングを数え切れないほど行っていますが、ビデオフィードの前にブラウザウィンドウを置いて、ほかの人が自分を見ていること(または自分が相手を見ていること)に気を取られないようにしないと、実質的な創造的進歩は遂げられないと言います。そして通話中の「こんにちは」と「さようなら」の部分だけカメラをオンにすることもあるそうです。
この実験結果は、バーチャルワールド会議が普及するチャンスかもしれません。バーチャルワールドの会議なら直接のアイコンタクトがなく、ビジュアルキューは没入感のある3Dグラフィックスです。どちらの会議がいいかの判断は、読者のみなさんにお任せしますが、Wagnerは、Zoomの通話よりも昨年バーチャルワールドのBreakroomを使った座談会のほうが鮮明に記憶に残っていると話しています。
詳しくは…
Study: Online Video Meetings Impair Creativity -- Opportunity For Virtual World-Based Conferencing?
ROBLOXで現実のブリトーショップのプレゼントキャンペーンが実施され、500万人以上の追加訪問を誘致
Chipotleというメキシカングリルのチェーンレストランが、ROBLOXでバーチャルブリトーづくりのゲームを利用したキャンペーンを実施しました。このキャンペーンでは、ゲームをクリアした先着10万人のユーザーが、ChipotleのアプリやWEBサイトで利用できる商品引換コードと交換できるBurrito Bucksを獲得することができました。
キャンペーンのニュースはアメリカのマスメディアで広くカバーされたようですが、実際の効果まで追及する記者はほとんどいませんでした。そこで、Wagnerが調査することにしたようです。子供向けのメタバース・プラットフォームの体験指標を追跡しているRoMonitor Statsの協力により印象的なデータが得られました。
データによれば、4月7日にブリトーの無料配布によって、およそ500万人の訪問者が増えたと推定されます。
これはかなりすごいことです。Wagnerは、メタバース・マーケティング・キャンペーンの経験がありますが、キャンペーン全体の訪問数はせいぜい5桁程度が普通だったといいます。
バーチャルブリトーづくりゲームは簡単に遊べて、ゲームとしての面白みもあったようです。ただし、このようなバーチャルな活動が、Chipotle社の実際の収益につながるかどうかについては、次の決算報告を待つべき問題でしょう。
原文にグラフがあります。詳しくは…
Chipotle's Burrito Giveaway In ROBLOX Attracts 5 Million+ Extra Visits -- RoMonitor Stats
SLファッションブログのヒント:アバターのアウトフィット詳細をテキストで書き出す方法
ストロベリーリンデンとして知られるStrawberry Sighさんが、Twitterで共有した短い動画の中で、アバターのアウトフィット詳細をテキストファイルに書き出す方法を紹介しています。動画を見ると、ビューワのOutfits menuにオプションがあるようです。SLユーザーがスクリーンショットを撮影したり、ファッションブログを書いたりするときには、身につけている物のクリエイターを書き出します。クリエイターのクレジットを表記することはSLのエコシステムのためにとても大切なことですが、非常に時間がかかります。この手間が面倒で、Strawberryさん自身も、過去にブログやYouTubeをやめようと思ったこともあるそうです。この方法を知ることで、そのような思いをする人が減るといいですね。
I just remembered there is a way to save your outfit details in the Outfits menu in the viewer. I made a quick video to show. pic.twitter.com/yGzxeXvqSi
— Strawberry (@strawberrysingh) May 11, 2022
詳しくは…
SL Fashion Blog Tip: How To Export Your Avatar Outfit Details To Text
Second Lifeにオープンしたコラボレーション重視の共有キャンパス -- テレポートリンクあり
ウェルカムエリアへのテレポートはこちら。Eduverseの各SIMへは、下のSLURLからテレポートできます。
- Science Circle: http://maps.secondlife.com/secondlife/The%20Science%20Circle/72/129/30
- Virtech: http://maps.secondlife.com/secondlife/Virtech/127/126/31
- Community Virtual Library: http://maps.secondlife.com/secondlife/Cookie/201/212/21
- Mayo Clinic: http://maps.secondlife.com/secondlife/Mayo%20Clinic/121/170/34
- Whole Brain Health: http://maps.secondlife.com/secondlife/Inspiration%20Island/82/100/23
- University of New Mexico (at Rockcliffe): http://maps.secondlife.com/secondlife/Rockcliffe%20Village/48/42/23
メタバースへの関心が高まった当初は、文字通り何百もの大学がSecond Lifeにバーチャルキャンパスを開設していました(ハーバード大学もその一つです)が、近年はその熱も冷めつつありました。
しかし5月下旬に、熱心な教育者たちのグループがLinden Labの協力を得て、Second Lifeをベースにした新しいプロジェクトを試験的に公開しました。それがThe Virtual Worlds Education Consortiumです。(テレポートはこちら)
大学がそれぞれ孤立した(そしてたいてい誰もいない)SLキャンパスを持っていた前の時代とは違って、教育者たちは広々とした共有キャンパスを作ろうとしています。
VWECのメンバーであるGeorge Djorgovski(カリフォルニア工科大学)教授は「いつも地図上に緑の点があり、人々が何かを調べていたり、その近くで何かを見ていたり、常に何かが起こっているようにすること。それだけでも、SLに参加しているグループを助け、コラボレーションやリソースの共有などを増やすことができます。」と語ります。
Linden Labは、VWECを強く指示しています。
「(Lindenは)この活動の支援者(Madori Linden)を指名し、すべてのリンクとランドマークを機能させたまま、マップ上でEDU SIMを無料で移動できるよう大きな区画を確保してくれました。そして中央のウェルカムSIMを寄付してくれました。ここでは、新しいユーザーが到着したときに挨拶できる人がいて、最初の一歩を手伝うことができます。ほかにも、教育関連のポータルを用意して、新しいアカウントや組織のアカウントを作成し、標準のウェルカムアイランドの代わりに、このSIMから始められるようにする計画があります。」
VWECのメンバーは、これまでのバーチャルワールド教育プロジェクトを悩ませてきた問題、たとえば、学習曲線が急であること、ある人にとっては嫌がらせと思えるようなアダルトコンテンツが即興的に登場すること、SLの高いハードウェア要件などを意識しています。
図書館司書でVWECのメンバーでもあるValerie Hillさんは、「ハイテクノロジーが学習と生活に革命を起こしたと実感している人たちにとって、機は熟しました。」と語っています。 「マインクラフト世代が到来したのです。VWECは、できれば24時間365日、世界規模で新規ユーザーを助けるヘルパーを提供します。私たちは教育関連のグループなので、アダルトエリアは避けたほうがよさそうです。」
ハードウェアの要件については、得られるもので相殺されるとHillさんは言います。「持続的な臨場感は、より深い学習と批判的思考をもたらします。 もしかすると将来的にはクラウドストリーミングや、ほかの技術も選択肢に入るかもしれません。」
ソーシャルVR/メタバースプラットフォームは、2D仮想世界からユーザーの安全性について何を学ぶことができるか
下の動画はLinden Labのベテラン、Jim "Babbage" Purbrickさんの最新の講演です。彼はSecond Lifeや、そのほかの先駆的なバーチャルワールドから学んだことを、Eve OnlineやMetaの仕事に応用し、ここではユーザーの安全、つまりバーチャルワールドのトロール(荒らし)や、その他の悪者からの迷惑行為を抑えることに焦点を置いています。
この講演では、「VR開発者がしばしば無視する、旧来の2Dやテキストベースの仮想世界からの教訓」をOculus Venuesにどのように適用したかが紹介されています。Oculus Venuesは、悪名高いユーザーハラスメントの事例を生んだHorizon Worldsとは別のバーチャルワールドです。
「技術は変わるが、人は変わらない。」
この言葉は真実です。Purbrickさんのチームが適用した重要な教訓の1つは、現在進行中のハラスメントに対するリアルタイムの対応でした(動画の29分あたりから)。 ライブイベント中に荒らしがウロウロして問題を起こしている場合、ユーザーからハラスメントのレポートが提出された翌日に処理されるのではなく、リアルタイムで対処する必要があるのです。
そこで、会場のサポートスタッフが目に見えない形で不正利用者を追跡・特定し、悪質な行為者に即座に対処する「ゴッドモード」の誕生につながりました。
「目に見えないインワールドサポートは、管理者が見えるテキストベースの2D世界からの教訓を生かして開発された、重要なイノベーションでした。」とJimさんは説明します。
詳しくは…
Watch: What Social VR / Metaverse Platforms Can Learn About User Safety From 2D Virtual Worlds
近くのSLアバターのファッションクレジットを表示するツール 「What's She Wearing」
Second Lifeのマーケットプレイスで、近くのSLアバターのファッションクレジットを表示する「What's She Wearing」HUDが無料で入手できます。このHUDは2016年にはすでに存在しており、StrawberryさんのYouTubeチュートリアル(下の動画)にも登場します。
しかし、このHUDは多くの人を動揺させました。Strawberryさんの話によれば、外出しているときにアバターが着ているものを知られるのが嫌な人は多いようです。自分で考えたコーディネートがクリックひとつで、ほかの人の手に渡ってしまうことを考えると当然かもしれません。
しかしWagnerは、この話に納得がいかないようです。SLのファッショニスタはスクリーンショットを撮影したあと、商品のクレジットを載せます。それとどう違うのでしょうか。現実のインフルエンサーでもInstagramの投稿をするときには、着ているアイテムのブランドクレジットをすべてInstagramに記載しているのです。なぜ問題になるのでしょうか?
Strawberryさんは「ファッショニスタの多くは、完全にコピーされることを望んでいない」と説明します。「彼らは自分たちが個性的な見た目であると感じており、誰かが自分の着ているものをすべて購入して、似たような見た目になることは望んでいないのです。」
考えてみれば、それは理にかなっているのかもしれないとWagnerは続けます。Instagramのファッショニスタには何億人もの潜在的なフォロワーがいますが、Second Lifeのファッショニスタが影響を与えるユーザーベースは多くても10万人くらいです。つまり、ゴシップの多い小さな街で、最も素晴らしくユニークな見た目を競い合うようなものなのでしょう。
正しいことをするため、そしてドラマを避けるために、ファッションブロガーは写真にすべてのクリエイターのクレジットを記載しようとします。しかし、このツールでそれを行うと、ほかの種類の非難やドラマに晒されてしまう可能性があるのです。皮肉ですね。
来月のおすすめバーチャルワールドニュースもお楽しみに!
Snap Shot Location: NEO KABUTO CITY
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